DEAR 開発教育協会

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知らないからこそ話し合おう!#03『基本的人権』

概要

人権の出発点について理解を深める教材です。
実はよくわかっていない逮捕などの刑事プロセス。基本的な知識を身につけながら「人身の自由」を軸に人権の理解を深めます。

  • 編集・発行:特定非営利活動法人CrimeInfo
  • 協力:認定NPO法人開発教育協会(DEAR)
  • 助成:ラッシュジャパン合同会社「ラッシュジャパン チャリティバンク」
  • 頒価:無料
  • 頒布形態:PDF(ダウンロード)版、冊子版 A4判32頁 

ねらい

  • 人権思想がどのように生まれたのか歴史を振り返りつつ、基本的人権の出発点である「国家からの自由」について理解する。
  • 「国家からの自由」として重要な「人身の自由」について考える。

「人権」とは心構えではなく、よりよい社会を作るためのものとして、中世以降人々が作り上げてきたもので、そのプロセスは今も続いています。ここでは、人身の自由が私たちひとりひとりにとってどれだけ大切なものであるかという点から、理解が深まることを願っています。

教材の構成

  • 本教材には4つのグループワークが収められています。
  • それぞれ単体でも使えますが、アクティビティ1から実施するとより理解が深まります。
  • 対象者や所要時間、ねらいに沿って、自由に組み合わせて活用してください。

もくじ

  • はじめに
  • 使い方・すすめ方
  • アクティビティ1 導入 「大川原化工機事件」の事例を読む
  • アクティビティ2 用語と流れの整理 逮捕されたらどうなる?
  • アクティビティ3 絵カード文合わせ 国家からの自由~基本的人権の出発点
  • アクティビティ4 事例から 国家からの自由の場面、刑事司法に関わってくる人権について知る
  • ふりかえり
  • リソース紹介

アクティビティ2 用語と流れの整理 「逮捕されたらどうなる?」のカード

教科との対応

中学校:社会科(公民的分野)

中学校:社会科(公民的分野)

高等学校:公民科(公共、政治・経済)

教材の入手方法

CrimeInfoのウェブサイトからダウンロードしてください。

ワークショップ参加者の声

2026年8月6日/d-lab(開発教育全国研究集会)にて

  • 人権と身体的自由の剥奪や、逮捕から勾留までの一連の法的手続きなどすべて初めての知識だった。
  • 弁護士の先生がつくる教材の視点はとても興味深かったです。憲法を学ぶ場でも国に基本的人権を守らせるためのものが憲法というお話は聞いていましたが、刑事裁判にいつ何時巻き込まれる怖さも思うとまた1つ具体的な視点だと感じました。司法にも国民がしっかりと監視し意見していく必要性も感じました。
  • とてつもなく意義深い領域でお話を伺えて良かったです。
  • 一般的な人権と憲法上の人権のギャップで混乱する領域を敢えて選ぶといった点も興味深かったです。
  • 実際の被疑者の状況はなかなか分からず、貴重な機会でした。
  • 参加された新聞記者の方も報道の責任を話されていましたが、報道よりも圧力の少ない一般人の責任を感じました。

ワークショップ報告

アクティビティの展開の参考になるよう、d-lab2026にて実施した、ワークショップ体験の様子はnoteでレポートしています。

d-lab2026(開発教育全国研究集会)にて、教員、一般の方を対象にしたお試しワークショップの様子(2026年8月)

制作者よりメッセージ

人間である以上、そして、ただ「人間である」というそれだけの理由で、一人の例外もなく誰もが生まれながらに当然にもつ「権利」、それが「人権」です。「人権」という考え方は、ヨーロッパにおいて生み出され、発展しました。そして、日本においては、第二次大戦に敗れた後、日本国憲法の制定によってようやく「人権(基本的人権)」という考え方が本格的にもたらされるようになりました。つまり、人権概念は、生成と発展の(大部分の)過程を経ずに日本に持ち込まれたわけですが、歴史的な文脈を抜きにして人権を十分に理解することはできません(アクティビティ2参照)[1]。ここに、「人権」を学ぶうえでの難関のひとつがあります。

もうひとつの、おそらく、より大きなハードルは、「国民が一般にイメージする『人権』と憲法研究者が認識する『人権』にはギャップがみられる[2]ということです。憲法研究者(及び大学等で憲法学を学んだ人々)にとって、人権とは、まずもって国家権力による侵害・制約から守られるべきものであるのに対し、一般的に学校での「人権教育」においては、人権とは私人による侵害から守られるべきことが想定されています。こうしたギャップが生まれるうえで影響を与えたものとして、故・吉田俊弘氏は、1969(昭和44)年版の中学校社会科学習指導要領と指導書を挙げます。すなわち同指導書は「『政治権力から自由・権利を守る』という面は大切であると述べながらも、私人相互間の人権という観点をこれまで以上に重視して『いやしくも自己の権利を濫用して他人の権利を侵すようなことがあってはならない』(339頁)ことを戒めているのである」と。こうした考え方を基礎に「『自分の人権のみならず他人の人権についても正しく理解し、その権利の行使に伴う責任を自覚して、人権を相互に尊重し合うこと、すなわち、人権の共存の考え方』として理解すべきである」(人権教育・啓発に関する基本計画(平成14年3月15日閣議決定)という考え方が展開され、そうであるからこそ、日本の人権教育においては「『思いやり』『やさしさ』といった心構えの問題として人権を捉える傾向」[3]が生じている、というのです。

加えて、現代においては、憲法に明文規定のない「新しい人権」とよばれるものが認識されるようになったり、国家(公権力)以外のアクターが行う人権侵害行為が問題となったり、さらには国際法によって人権の保障が試みられたりするようになるなど、人権の内容が豊富化・複雑化すると同時に、人権保障が問題となる局面も格段に広がりました。こうした事態は、上記の「人権の共存の考え方」の定着を、より促進する方向で機能するとともに、ただでさえ難しい「人権」に対する理解を、ますます困難にしています。

このような現状を踏まえ、この教材では、人権思想が生まれた歴史的な経緯を大まかに把握し、いわば「人権」の出発点である自由権(国家からの自由)について、「人身の自由」を軸として理解して頂くことに主眼をおきました。自由権のなかでも、財産権などの経済的自由権や、表現の自由などの精神的自由権と異なり、刑事手続における人身の自由は、ややとっつきにくいかもしれません。しかし、最近の日本で実際に起きた、「大川原化工機事件」(アクティビティ1・4参照)などの冤罪事例を通して、人身の自由が、私たちひとりひとりにとってどれだけ大切なものであるかを実感して頂けると思います。そのうえで、「人権の共存の考え方」にとどまらない人権の出発点についての理解を、あらためて深めて頂ければ幸いです。


[1] より詳細には、CrimeInfoビデオライブラリー「人権という考え方—過去,現在,そして未来(山元一氏)」(https://www.crimeinfo.jp/seek-the-death-penalty/civideolibrary/)および山元一『人権の発展と憲法 ― 過去,現在,そして未来』(信山社、2026)を参照されたい)。

[2] 吉田俊弘=横大道聡「探求する憲法―問いから始める道案内 第14回 人権をどう教えるのか」法学教室464号57頁[吉田俊弘]。

[3] 吉田=横大道・前掲注2)58-60頁[吉田敏弘]。なお、阿久澤麻理子「『日本型』人権教育を再考する」連合総研レポートDIO 37巻11号(2024)(https://www.jstage.jst.go.jp/article/rengosokendio/37/11/37_19/_pdf/-char/ja 最終アクセス:2026年4月18日)も参照されたい。


シリーズ教材

『知らないからこそ話し合おう!#1裁判員裁判・死刑制度』
『知らないからこそ話し合おう!#2「刑務所」のこと』

著作権について

教材の著作権は、監獄人権センター・ClimeInfoに帰属します。著作権法上の例外を除いて、教材等の全部または一部を無断で複製したり、転載・引用することはできません。