DEAR 開発教育協会

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スマホから考える世界・わたし・SDGs

概要

  • 発行:開発教育協会
  • 企画・制作:大平 和希子(東京大学大学院)、田中 滋(アジア太平洋資料センター)、華井 和代(東京大学)、小口 瑛子・八木 亜紀子(開発教育協会)
  • イラスト:勝野真美
  • 2018年3月10日、A4判68頁
  • 一般価格:¥2,000(税込¥2,200)図書館価格¥4,000(税込¥4,400)
  • 会員価格:¥1,600(税込¥1,760)
  • 対象:中学生以上
  • 助成:LUSHチャリティバンク、大阪コミュ二ティ財団

責任ある消費者として、また、より公正な社会をつくる市民として

わたしたちが日常で使っている製品は、世界各地の生産地における、労働問題、人権問題や環境問題と密接につながっています。特に工業製品の場合、そのつながりは農産物や衣料品よりもさらに広範かつ複雑です。そして、生産工程が複雑で消費者の目から見えにくくなるほど、問題が看過される可能性は高まります。

本教材は、日本を含む世界各地で普及しているスマートフォン(スマホ)を取り上げることで、生産工程においてさまざまな問題をはらんでいる工業製品の事例を学び、責任ある消費者として、またより公正な社会をつくる市民としての意識を高めることを目的とします。

2018年消費者教育教材資料表彰「優秀賞」を受賞

この教材は、消費者教育教材資料表彰の「優秀賞」を受賞しました。この賞は、(公財)消費者教育支援センターが主催するもので、教育現場で役立つ優秀な教材を表彰することで、学校における消費者教育の充実・発展に寄与することを目的に実施されるものです。
※賞については(公財)消費者教育支援センターのウェブサイトをご覧ください。

教材に関する教員の所見(抜粋)

  • 子どもたちにとって便利を超えた、なくてはならない必需品としてのスマホという切り口から問題を掘り下げている点が特に優れている。
  • スマホの日常性と世界とのかかわりは、生徒に深く考えさせたり探究活動をする題材としてとてもよい。さすが開発教育協会だなと感じました。
  • 生徒が手を動かして学習できるので、とても興味を持って取り組んでいました。
  • 情報量の大きさ・多さに感動した。
  • 知識の取得、情報の活用、授業での実践方法など、消費者教育の授業ですぐに使える教材です。

ねらい

1.グローバル経済のしくみと社会問題、自分とのつながりを理解する
わたしたちが身近に使っているあらゆるモノは、世界各地に散在する多くの原料供給地や生産地を経由し、製品となり、わたしたちの手元に届きます。スマホを題材に、見えにくくなっている生産工程を知ることで、グローバル経済のしくみとそこから派生する社会問題と、自分とのつながりを理解します。

2.消費者として、市民としての責任について考える
スマホが製造される工程で発生している人権問題などの事例と解決に向けた取り組みを知り、消費者として、また、市民として果たすべき責任を考えます。

もくじ

ワーク1 スマホの歴史を紐解く(4コマ漫画)

今や生活必需品と思う人も少なくないスマホ。しかし、現在多くの人が使っているiPhoneが誕生したのは2007年のことで、日本でたくさんの人が使うようになったのは意外と最近のことです。そもそも、携帯電話が最初に登場したのは1985年。短い期間で急速な発展を遂げてきました。4コマ漫画を使いながら携帯電話やスマホが無かった時代に思いを馳せ、急激な変化について考えてみましょう。

ワーク2 スマホとわたしたちの生活(四つの窓/スマホライン)

スマホを持っている人は、スマホがない生活を想像できますか?持っていない人は、どういう時に「スマホがあったらなあ」と思いますか?わたしたちにとって、スマホとはどういう存在なのか、考えてみましょう。2つのすすめ方を紹介しているので、対象者に合わせてやりやすい方を実施してください。

これまで使ってきたスマホの台数で並んでみましょう(スマホライン)

ワーク3 スマホ・クイズ

日本に携帯電話・スマホが浸透してきたこの20年。スマホは世界で、そして日本で、どのくらい使われているのでしょうか。これまでに廃棄されてきた携帯電話・スマホはどのくらいの数になるのでしょうか。携帯電話・スマホを取り巻くデータについて詳しく見てみましょう。

ワーク4 並べてわかる!スマホが手元に届くまで(カード)

スマホが製造され、消費者の手元に届くまでの工程を、カードを並び変えながら原料調達、部品製造と組み立て、流通の3つの観点から、理解します。サプライチェーンの基本的な流れを押さえるワークです。必要に応じて、廃棄の観点のカードを加え、実施することもできます。

ワーク5 原料の世界地図

スマホ一台の重さはたった200グラム前後。とても小さな機器なのに、その中にはインターネット、写真撮影、音楽視聴、スケジュール管理機能など多様な機能があり、パソコンとほぼ同じくらいのことができます。

この小さなカタマリの中に、どれくらいの数の、どんな部品が入っているのでしょうか。また、それらはどこから来ているのでしょうか。ここでは、「世界中から来る原料」と、ワーク6の導入としても使える「コンゴ民主共和国とのつながりを考える」の2つのすすめ方を紹介しています。

ワーク6 原料調達段階での問題「紛争鉱物をめぐる問題」(動画・写真・新聞記事)

スマホには、世界各国から来た数多くの鉱物が使われています。その鉱物の採掘現場は、どのような状況なのでしょうか。スマホをわたしたちにもたらしてくれる人々は、どのような人たちで、どんな暮らしをしているのでしょうか。DVD『スマホの真実』(PARC)または写真(以下からダウンロード)を使った2つのすすめ方を紹介しています。

※DVDはPARCで販売しています。購入してご利用ください。
アジア太平洋資料センター(PARC)Tel:03-5209-3455 E-mail:office@parc-jp.org

「紛争鉱物」をめぐる動きを受けて、2010年に欧米で紛争鉱物取引規制が導入されました。このことは、日本ではどのように報道され、また、日本企業にはどのような変化が起こったでしょうか?また、その後、「紛争鉱物」をめぐる問題は解決に向かったのでしょうか?

ワーク7 新聞記事から知るスマホを取り巻く問題(記事・見出しづくり)

新聞記事を使いながら、課題解決に向けた世界の動きと、その難しさの両面について考えます。ここでは、「新聞記事づくり」と「見出しづくり」の2つのすすめ方を紹介しています。

ワーク8 製品製造段階での問題「組み立て工場での人権問題」(ロールプレイ)

精密機械であるスマホの大量製造を可能にしているのは、組み立て工場で働く多くの人々がいるからです。組み立て工場の多くはアジア地域にありますが、工場で働く人々やその関係者に、わたしたちの消費生活はどのような影響を与えているのでしょうか。

ワーク9 スマホから考えるSDGs

2015年9月「国連持続可能な開発サミット」が開催され、2030年までの目標となる「持続可能な開発目標(SDGs)」が採択されました。2000年に採択された、途上国の開発目標を定めた「ミレニアム開発目標(Millennium Development Goals:MDGs)とは異なり、先進国を含む全ての国に適用される普遍性が最大の特徴です。SDGsでは、「誰一人取り残さない-No one will be left behind」を理念とし、貧困に終止符を打ち、地球を保護し、すべての人が平和と豊かさを享受できる社会を目指すことが目標とされています。その重要な指針として17の目標(ゴール)が設定されました。

SDGsとわたしたちの生活、そして、SDGsとスマホを取り巻く問題は、どのようにつながっているのでしょうか。

ワーク10 わたしたちにできること(ランキング)

これまで、スマホをめぐり、世界中に様々な課題が存在していることを学びました。わたしたちはスマホを利用する消費者です。それと同時に、自分や家族、親戚、友人の親戚などが、販売店・商社・製造メーカー・通信会社で働いているなど、様々な形でつながっていることも多いでしょう。

世界には、この問題に着目して動いている団体や人がたくさんいます。それでもまだ解決されていない問題が目の前にあります。現状を改善するためにはどうしたらよいか、一消費者としてだけではなく、多様な立場から出来ることは何かを考えてみましょう。2つのすすめ方を紹介しています。

発展編(カードワーク)

歴史から紐解く世界の関係:自分たちの住んでいる地域の歴史とコンゴの歴史を対比させながら、自分たちの生活が与えてきたインパクトや関係について考える。

授業に役立つ!9のコラムを収録

  1. 使用済みのケータイ・スマホはどうしてる?~電子ゴミの廃棄とリサイクル
  2. 買い替えるしかない仕組み
  3. 紛争鉱物取引規制の意義と課題
  4. フェアフォンって?
  5. コンゴ民主共和国の紛争は「第二次世界大戦以来最悪」なのか?それとも
  6. 携帯・スマホの製造現場
  7. 日本企業の取り組み
  8. 企業に手紙やメールを書いてみよう
  9. デニ・ムクウェゲ医師の活動

付録・スライド

付録資料のダウンロードには教材に掲載のパスワードが必要です。

スライド資料(Microsoft Power Point / 4.76MB)

スライド資料

写真セット(ワーク6用 / PDF / 4.51MB)

写真セット

実践レポート

N中高生と5回連続ワークショップ!「私も社会を変えられる?」(2021年3月)
http://dearstaff.blogspot.com/2016/04/n5.html

  • スマートフォンという身近なものに、自分のよく知らない国が深く関わっていて、さらにその国で深刻な問題が起きていることを知ることができました。そして、このような国際的な問題ないし経済的な問題は、様々な要因が複雑に絡み合っていて簡単に解決できるものではないということを知りました。ただ、そのような難しい課題を解くために活動している人の話を聞いて、エネルギーをもらった気がします 。
  • 社会問題の解決について、自分が無理だと思っていた選択肢が本当はできたり、考え方を少し変えるだけで選択肢が広くなることが、これからアクションを起こすにあたって大きな一歩になったように感じます。

上智大学での実践レポート(2018年1月)
http://dearstaff.blogspot.com/2018/01/blog-post.html

  • 公正な貿易と公平な貿易は違うものだと感じた。驚いたことは、企業の多くが自分たちの製品の過程や背景を知らないことが多いこと。倫理的な消費者が求められているが、その姿勢は企業にも求められることだと思った。
  • 世間の風潮としては少しでもコストを押さえておきたいというものがあるのかもしれないけれど、新聞に書いてあるような、どこから調達しているかわからなかったということが、なるべくなるなるようにしていかなければならないと思った。
  • 当たり前の日常を当たり前だと思わずに(食べ物、日用品などすべて)身近にあるものを今一度SDGsの17の目標と照らし合わせて考えるといったことなどは、これからも少しずつでもしていけたらと思いました。

上智大学短期大学部での実践レポート(2018年4月)
http://dearstaff.blogspot.com/2018/05/blog-post.html

  • 初めて知ることばかりだったので、もっと世界のニュースに敏感になりたいと思った。まずは今日学んだことを家族や友達に話していきたい。
  • 貧困を背景として続く紛争に自分たちも関わっていたと知ってショックを受けた。自分が使っているものの裏側をいつも考える視点が大切だと思った。
生徒の感想
参加者の感想

ご注文方法

  • DEARの本は直販のみです。書店などには置いておりませんので(取次を通していません)、 DEARまでウェブ、ファクス、お電話にて直接ご注文ください。 詳しくはこちらのページをご参照ください。
  • DEAR事務所(東京都文京区)で直接ご購入いただくことも可能です。来所の際は事前にご連絡ください。
  • 教材総合カタログ(ヒルマ/スクラボ/PLUS)で一部の教材をご注文いただけます。詳しくはこちらのページをご参照ください。

実践に役立つリソース

実践に役立つ記事

実践に役立つリンク集

実践に役立つ動画集

DVD『スマホの真実』予告編(2分50秒)制作:PARC
Vimeoでのオンライン視聴もできるようになりました(2020年12月~)


10年間でつくられたスマホ、71億台!(2分12秒)
制作:グリーンピース・ジャパン


ムクウェゲ医師の闘い ~なぜ、コンゴの悲劇は終わらないのか(ザ・フォーカス 2019年2月3日放送)



映画『女を修理する男』予告編(2分)制作:ユナイテッドピープル(cinemo)



映画『ムクウェゲ 「女性にとって世界最悪の場所」で闘う医師』
監督:立山芽以子(TBS)
Amazon Primeで視聴することができます(2023年6月~)

デニ・ムクウェゲ医師のノーベル平和賞受賞について

本教材の制作メンバーの大平和希子さん、華井和代さんは「コンゴの性暴力と紛争を考える会」で活動されてきました。2018年のノーベル平和賞をコンゴ民主共和国(以下、コンゴ)の婦人科医・人権活動家のデニ・ムクウェゲ医師が受賞されるにあたり「考える会」では、以下のコメントを発表しました。

「(抜粋)コンゴにおける紛争下の性暴力は、コンゴだけの問題ではありません。コンゴ東部で産出される鉱物資源が電子機器の原料となって日本を含む世界各地の人々の生活に便利さをもたらす一方で、産出地域においては住民に対する人権侵害の原因となり、性暴力が「紛争の武器」として使われています。コンゴにおける性暴力を止める責任は、日本の政府・企業・一般市民にもあると私たちは認識しています」

ムクウェゲ医師の活動と、わたしたちの手元にあるスマホ、小型の電子機器は「鉱物」でつながっています。本教材でも、コンゴの紛争鉱物問題(ワーク6、ワーク7)、コンゴの歴史(発展編)、デニ・ムクウェゲ医師の活動(コラム9)で扱っています。今回の受賞を機に、このことを知り、考え、仕組みを変えるために行動を起こす人が増えることを願っています。

教材の著作権について

  • 教材・書籍等の著作権は開発教育協会に帰属します。著作権法上の例外を除いて、教材・書籍等の全部または一部を無断で複製したり、転写・引用・入力などしないでください。
    ※著作物が自由に使える場合(文化庁)http://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/seidokaisetsu/gaiyo/chosakubutsu_jiyu.html
  • ワークシート等の複写による利用は、学術的な調査研究、「非営利」の教育・学習活動に限ります。例えば、学校の先生が、授業で使うためにコピーを作って児童や生徒に配布することは「著作権法上の例外」なので、問題ありません。
  • 教材・書籍等を利用して、非営利目的の講義や参加型学習プログラムを実施する際には、事前の広報資料や当日の配付資料、事後のレポート等に、使用する著作物の著作権者が当会であることを明示してください。印刷物やウェブページには、例えば、「当研修/講座で使用する教材/テキストは、開発教育協会(DEAR)発行の教材です。詳細はhttp://www.dear.or.jp/を参照してください。」等の表記をしてください。