富の格差・相互依存 <実践事例>
ロゴ・マークの向こう側
-スポーツウェア産業から世界の相互依存性を学ぶ
セミナー「オックスファム・イギリスの教材から学ぶ~英国の開発教育ワークショップ」では、オックスファム・イギリスが作成したアクティビティ「グローバル・サプライ・チェーン」を実践した。これは、スポーツウェア産業を切り口に、世界の相互依存性を学ぶ教材「ロゴ・マークの向こう側」の中で、導入のためのアクティビティのひとつと位置づけられている。オックスファムの開発教育は、地球市民の概念に基づいている。この地球市民とは、広く世界に関心を持ち、世界がどのように動いているかを理解し、不公正に立ち向かい、地球規模の課題に対して行動を起こしていくことのできる市民のことである。
| 日時 | 2004年8月4日(水) |
| 参加者 | 45名(教員、NGO、学生等) |
| 主催 | 開発教育協会/DEAR、オックスファム・ジャパン |
| 講師 | アンジェラ・グルンセル(オックスファム・イギリス) 通訳:唐津聖子(オックスファム・ジャパン) |
| ねらい |
1.スポーツウェア産業にどのような人が関わっているか、その人々の状況がどのようであるか、またその流通経路が自分たちとどうつながっているのかを理解する。 2.スポーツウェア産業の工場労働者に対する共感を育てる。 3.グループディスカッションにより、話す・聞く技能を発展させる。 |
展開
- 6~8人のグループを作る。各グループに1枚ずつのカードと、模造紙を配る。
カードは6種類あり、二つ以上のグループに同じカードを配ってもよいが、6種全てのカードを使用するようにする。それぞれのカードには、スポーツウェアの製造から消費までに関わる人や組織の説明と、それに関わる設問が1つ書かれている。
カードの種類:「1.消費者とスポーツ選手」「2.販売店」「3.世界的に展開するスポーツウェア会社」「4.世界的に展開するスポーツウェア会社の買い付け業者」「5.開発途上国の工場」「6.工場労働者」 - 各グループで、カードに記してある説明と質問を読む。
- 話し合いをしながらその質問に対する答えを模造紙に記入していく。 答えは1つではない。できるだけたくさん挙げる。
- 全体で共有する。
講師のコメント
- このまま小学校で使うのは難しいが、手を加えることですばらしいものになると思う。
- 正解のない問題を考えたり話し合ったりする機会を、クラス内で作っていきたい。
- 世界について自分が持っている知識が、すごく偏っていることを実感した。
- 世界の様々な状況を噛み砕いて子どもたちに伝えて行きたい。
参加者の感想
- 教材には「少しでも社会を変えていこう」というメッセージが明確に打ち出されている。
- 決して押し付けではなく、みんなが意見を出せるように、できるだけペアまたは小グループで話をさせていた。また講師はグループを歩いて回り、話し合っていることに耳を傾けていた。
- ワークショップの後、講師は、「社会を変えるというととても大変なように聞こえるが、身近なことで構わない、どんな小さなステップでも踏み出すきっかけになれば」、と話していた。
世界的なスポーツ産業の供給路の間のつながり-購買者から労働者まで
資料シートと参加者の意見(抜粋)
1.消費者とスポーツ選手
選手やスポーツを楽しむ人々にとって、スポーツウェアは必需品ですから、彼らはスポーツウェアを買わなければなりません。同時に、世界中の若者がブランドのロゴのついたスポーツウェアを好んで着用しています。
Q.なぜブランドスポーツウェアはこれほど人気があるのでしょう?
<参加者の意見>
一体感がある/CMなどで見かける機会が多い/信頼感/自慢できる/どこでも手に入る/スポーツ選手も着ているのであこがれる/着ているだけでうまくなれる気がする/自分に自身が持てる/ノーブランドだとばかにされる
4.世界的に展開するスポーツウェア会社の買い付け業者
スポーツウェア会社に雇用されたバイヤーは、品質が良く、安く、納期の短い工場を世界中の貧しい国の中から探し出します。そして、スポーツウェア会社が求めるデザインどおりのウェアや靴の生産契約を申し出ます。Q.バイヤーはどのようにしてスポーツウェアを安価に製造させることができるのでしょうか?
<参加者の意見>
入札方式を競争化/材料を安く仕入れる/工場の設備を整え、人件費や福利厚生を軽視する/長時間低賃金労働交通の便の良い国や地域で工場を作る/環境について規制が少ないところで工場を作る
<講師コメント>
バイヤーに限らず、製造業はどうやって労働効率を良くするかに執着している。
5.開発途上国の工場
途上国の縫製工場では、被服の縫製と靴の製造のために何千人もの労働者を雇っています。これらの工場は自ら販売店に製品を売ることはせず、海外の企業向けに製造します。こうして注文どおりに作られた製品は世界中の目的地に送られます。Q.これらの工場はいかにして利益を最大化しているのでしょうか?
Q.注文された製品を時間内に納めるために、何をしていると思いますか?
<参加者の意見>
工場内の衛生環境が良くない/環境汚染を気にしない/大量生産/子どもを労働力にしている/品質を気にしない/賃金を安くしている
<講師コメント>
貧しい国の工場長は、何とかして契約を終わらせないように苦労している。賃金を多く払えない理由も、ここにある他の要因が関わっている。
6.工場労働者
スポーツウェア工場の労働者は通常、低賃金で雇われる女性労働者であることが多いです。彼女らは劣悪な労働環境で働き、残業を余儀なくされることも頻繁に起こります。Q.これらの工場で働く労働者の環境について、どのようなことを知っていますか?
Q.彼女らの労働環境が劣悪なのはなぜだと思いますか?
Q.これらの工場で働く労働者の環境について、どのようなことを知っていますか?
<参加者の意見>
休みがない/臭い/不衛生的/長時間労働/ペナルティーがあることを恐れている/ストライキができない/雇うこと、違う人を見つけることが簡単/労働者には補償がない
Q.彼女らの労働環境が劣悪なのはなぜだと思いますか?
<参加者の意見>
仲介人の存在/子どもも女性も弱い立場にあるから、反抗・抵抗できない/貧困/失業率が高い/他に良い仕事がない/識字率が低い・教育/消費者が安いものを求めているから/他人事/競争が激しい、価格破壊/自分たちの権利について知らない/選択肢がない/組合などの組織をつくる自由がない
<講師のコメント>
生徒たちにやる場合は、今日のようにたくさんの知識を持っているわけではないので、このようなたくさんの答えが出ることはない。しかしこれら6つの段階が、何らかの形で関係しているのだ、ということは理解できる。このワークでは、だれがどのような状態で、ここに関わっているのかということが重要だ。
※ DEARニュース111号(2004年10月)「実践事例報告」より一部再編集のうえ掲載
※ 著作権は(特活)開発教育協会が保有しています。無断で転載や複製を行うことを禁じます。
■オックスファム(Oxfam)
世界100ヶ国以上で開発事業や人道支援事業を通して貧困問題に取組む国際協力NGO。日本では2003年12月にオックスファム・ジャパンが設立された。
オックスファム・ジャパン http://www.oxfam.jp
オックスファム・イギリス http://www.oxfam.org.uk
■アンジェラ・グルンセル(Angela Grunsell)
英国生まれ。小・中学校の教員や、カリキュラムアドバイザーなどの職を経る。現在、オックスファム・イギリスの開発教育プログラム部長、小学校プログラムを担当。
■『Looking Behind the Logo - The global supply chain in the sportswear industry』Oxfam, 2004
セミナーの直後に、英国でこの教材が出版された。アクティビティ、問題背景の解説、参考資料などが紹介されている。対象は13歳以上。






