市民教育 <実践事例>
解説編-貿易が暮らしを支配する?!
WTOを知る「貿易協定ゲーム」
WTOを知る教材「貿易協定ゲーム」体験セミナー
なぜ、ルールにのっとって行われる国際貿易が、富める国と貧しい国との格差をますます広げていくことになるのだろう?持続可能な世界経済とは、どのようにあるべきだろうか。英国クリスチャン・エイドによる国際貿易ゲーム教材第3弾「貿易協定ゲーム」を体験し、意見交換した。
| 日時・会場 | 2004年1月31日 四時間/日本キリスト教会館6階7AB |
| 講師 | 佐久間智子さん(「環境・持続社会」研究センター(JACSES) |
| 進行役 | 田中祥一、萩尾愼亮、阿部秀樹、小林正人、出口雅子 |
| 参加者 | 40名(教員、学生、NGO職員) |
| 主催 | 開発教育協会/DEAR |
| ねらい | 「貿易協定ゲーム」を通して、国際貿易協定がつくられる仕組みを知り、その過程で途上国が排除される不公正さを体験する。また、WTOに関する基礎知識を得、学校教育などの学びの場で、こうした問題をどう考えていけばよいか、共に検討する。 |
| 展開 | 1. アイスブレーキング 15分 2. 「貿易協定」ゲーム 90分 ゲーム説明(10分)、ゲーム(60分)、ふりかえり(20分) 3. WTOについての解説 60分 4. 意見交換 45分 |
1.アイスブレーキング
クイズを通して、開発教育協会や「貿易ゲーム」についての知識・経験を確認。
2.「貿易協定」ゲーム
役割(今回は各国以外の役割を主催者側が担った)
- 進行役―1名
- 国(A,B,C,D,E,F)―生産と貿易を行い、WTO会議に参加する。
- 国際市場―1名。製品の買取と航空券の販売。
- プレス―2名。ゲーム中に各国で起こっていることを取材して報告したり、WTO会議の結果をリリースする。
- WTO―1名。WTO会議の議長
ゲーム説明
進行役がゲームの目的、ルール、進め方を説明する。
- このゲームは、WTOで貿易協定がどのように合意されるかのシミュレーションである。
- ゲームの目的は、「製品」(コットン、砂糖、米、ブランド薬品、コピー薬品)を作りお金を儲けて生活を豊かにするためにWTOに影響力を行使すること。
- 参加者は6つの国に分かれ、国ごとに与えられた道具を使用しながら製品を生産し、それを国際市場が定められた価格で買い上げる。国間の取引も可。
- ゲーム途中で2回、WTO会議が召集される。各国は航空券を購入し、会議に参加し、将来の貿易規制の新ルールを決定する。
- WTO協定に違反した国は、罰金または制裁を受ける。
<国際市場での買取価格>米5袋:10ポンド
砂糖5袋:10ポンド
コットン5袋:10ポンド
コピー薬品1瓶:5ポンド
ブランド薬品1瓶:15ポンド
航空券1枚:40ポンド
第1ラウンド―生産と貿易
各国は、それぞれ与えられた道具(ハサミ、鉛筆、ペン、製品の型紙)を使って生産を開始する。C・E国は、国際市場が最も高値で買い取る「ブランド薬品」を含む複数の型紙や豊富な道具のほか、WTO会議で話し合われる新協定についての極秘情報を与えられている。
ほかの国は低価格の製品の型紙しか与えられず、道具も少ない。製品を国際市場に売りに行った国はWTO会議に参加するための航空券を購入する。
- B・E国はすぐに数名分の航空券を購入し、またWTO会議で決定される事項について密かに話し合いを行った。
- ほかの国は、限られた道具を使って生産を始めたが、なかなか航空券を買うだけの売り上げが得られない。
第1回WTO会議
第1回会議では、「特許に関する新協定」と「保健に関する新協定」のいずれかを採択する。投票によって前者が選ばれ、その結果、B国は「コピー薬品」の販売が禁じられた。
- 会議の参加者は、C・E国各四名、A・D国各一名(B・F国は欠席)。
- C・E国は事前にどちらに投票するかを話し合い、一名を除いて全員が「特許に関する新協定」に投票した。
- ほかの国は事前に情報を与えられていないため、何がなんだか分からないうちに投票になってしまい、唖然としている。
第2ラウンド―生産と貿易
第1回WTO会議で決定された「新協定」に基づき、生産を続ける。
第2回WTO会議
第2回会議では、「農業に関する新協定」と「公共事業に関する新協定」のいずれかを採択する。投票によって後者が選ばれ、その結果、A・B・D・F国はハサミを利用するのに50ポンドの利用料を支払わなければならなくなった。
- 会議の参加者は、C国4名、E国3名、B国1名(A・D・F国は欠席)。
- 投票は、B国1名とC国2名が棄権。残りの5名は「公共事業に関する新協定」に投票。
第3ラウンド―生産と貿易
第2回WTO会議で決定された「新協定」に基づき、生産を続ける。
- C国は、ほかの国に道具を貸したり、「出稼ぎ労働者」を受け入れた。
- D国はC・E以外の国に連帯を呼びかけたが、うまくいかず。
- A・F国は「どんなにがんばってもWTO会議には参加できない」「参加しても意味がない」と労働意欲を失っている。しかし、中には次のWTO会議で自分たちにもいいことがあるかも…と期待しながら生産を続ける人も。
ふりかえり
ゲーム終了後、ゲーム結果(貯金額、WTO会議参加者人数、封筒の中身)を発表。その後、グループ内でゲームでの出来事や気持ちをふりかえる。
<C・E国メンバーからのコメント>
「WTO会議はどう転んでも自分たちに有利な結果になった。逆にどう転んでも不利になる国もある」「他の国の人が来ても、無視したり、『帰れ』と、いじわるを言った。極秘情報があるとないとでは差があった。自分たちはブランド薬品しか生産せず、第一次産品はつくっていない」など。
<他の国メンバーからのコメント>
「希望がない。テロに走るか、酒に溺れるか…」「やみくもに生産するよりは、もっと情報収集に励めばよかった」「完全なモノカルチャーで、どんなに働いてもWTO会議には参加できない。途中でやる気を失った」「WTOの人が恐ろしかった」など。
3.WTOについての解説
講師の佐久間智子さんより、WTOの概要や問題点、ゲームでの出来事を踏まえて実際に起こっていることなどを解説。
※詳細は<解説編>をご参照ください。
4.意見交換
佐久間氏への質問および「貿易協定ゲーム」の教材としての長所や短所、改善点などをグループごとに話し合った。
教材としての長所
- 燃える。WTOを知ることのきっかけになるのでは?
- 今までの「貿易ゲーム」に比べてWTOもからみおもしろかった。
- 「貿易ゲーム」よりも途上国の苦しさがわかる。
- WTOによって、労働したことの意味がなくなってしまうなど実感できるのがよい。
- WTOのやりきれなさを感じられて良い。
- 中学では「貿易ゲーム」、高校では「貿易協定ゲーム」が良いかな?
教材としての短所
- 時間がかかる。
- 参加者がWTO会議の意味をよく理解していないと難しい。
- 航空券を買うために稼いだお金をすべて注ぎこまなければならないという動機づけが難しい。
- 「極秘情報」は大人でも読み解くことが難しい。
- 途上国は希望が持てない。少しは希望が欲しい。
- 切実さがわからない。肌で感じるものがないとゲーム性がない。
- WTOについては難しい用語が多い。
改善点
- WTO会議は先進国にとっても、利害関係がある議題であったほうがよい。
- 製品に価格以外の意味があると良い。
- オプションルールとして、フェアトレードや、途上国は貧しくて餓死してしまうなど。
- 決定事項の言葉をわかりやすくする。
佐久間氏よりコメント
WTOのしくみについては他の人より詳しいはずなのに、WTO会議に参加した時、混乱した。しかし、その「わからない」というところに意味がある。わざわざ難しくしているというところは、現実に忠実なのではないか。
※ DEARニュース108号(2004年4月)「実践事例報告」より一部再編集のうえ掲載
※ 著作権は(特活)開発教育協会が保有しています。無断で転載や複製を行うことを禁じます。
貿易協定ゲーム Trade rules!, Christian Aid, 2002
英国のNGOクリスチャン・エイドによる国際貿易ゲーム教材の第三弾。 原著はDEARで閲覧可。 http://www.christianaid.org.uk/貿易ゲーム Trading Game, Christian Aid, 1982
世界経済の動きを擬似体験して、そこに存在するさまざまな問題について学び、その解決の道について考えることをねらいとしたシミュレーションゲーム。2001年には、より今日課題を盛り込んだ日本版の『新・貿易ゲーム』を、DEARと(財)神奈川県国際交流協会とで共同制作した。
解説編-貿易が暮らしを支配する?!
WTOを知る「貿易協定ゲーム」






