市民教育 <実践事例>
解説編-イングランドの市民教育
セミナー「英国の市民教育」
セミナー「英国の市民教育」
英国で2002年より学校教育に導入された「市民教育(Citizenship Education)」。「市民」とはどういうことなのか、どのように実践されているのか、英国で市民教育をすすめるオードリー・オスラー氏を招いてワークショップを行った。
| 日時・会場 | 2003年8月5日170分/早稲田奉仕園小ホール |
| 講師 | オードリー・オスラー氏(英国レスター大学「シチズンシップ学センター」センター長) 通訳 和栗百恵氏 |
| 参加者 | 20名程度(教員、学生、NGO職員) |
| 主催 | 開発教育協会/DEAR |
| ねらい | 「市民」とはどういうことか、また市民性を育む教育(citizenship education)はどのようにして 実践されるかをワークショップ形式で体験し、市民教育への理解を深める。 |
| 展開 | 1. アイスブレーキング 20分 2. セミナーの目的の説明 10分 3. ワーク1)市民性の意味を探る 45分 4. ワーク2)世界人権宣言 30分 5. ワーク3)子どもの権利 45分 6. ふりかえり 20分 |
1.アイスブレーキング-バースデイ・ライン
一切しゃべらずに、誕生日順に輪になって並ぶ。
2.セミナーの目的について講師の説明
「市民(シチズン)」「市民性(シチズンシップ)」について考えるワークショップを通し、特に以下の3つの観点から考えることがこのセミナーの目的である。
- ローカル(地域レベル)、ナショナル(国レベル)、グローバル(地球レベル)のそれぞれのレベルでの「市民」「市民性」とは
- シチズンシップと人権の関係
- シチズンシップと子どもの関係
3.ワーク1:“市民性”の意味を探る
- 「“市民性”の意味を探る」のワークシートを配り、2人1組のペアをつくる
- ペアで話し合い、14項目の中から、「日常生活の中でもっとも重要であると思う4つ」を探してチェックする
- 選んだ4項目について、その項目は「権利」なのか「責任」なのかを判断する
- 14項目の中で「在日外国人」に当てはまらないことを選んでチェックする
- 発表1:「重要である」と選んだ4つの項目
(グループ1:5・8・12・14)
・ 権利と義務については、守られているもの(受動)か発信していくもの(能動)かで、権利か責任かを判断した
・ 市民として権利を守られていること、守ることが大切
(グループ2:1・2・3・14)
・ 1~3は基本的なこと、14は世界のことに責任を感じるから
(グループ3:4・5・6・12)
・ 1・2を省いたのは大人にだけ当てはまる項目だから。子どもは市民じゃないの?
・講師から発問…12を選んだのは面白いですね。どうして?
→権利が守られているのか、そうでないのかを知ることは市民としてやるべきことだから。
(講師のコメント)
1と12は関係している。1を選んだ人は12も選んでいるのではないだろうか。投票することはわたしにとっては「日常」ではない。その権利があるときは意識しないが、もし投票権が奪われたら、そのとき初めて意識するような権利のように感じている。 1の選挙は日本においては義務になっていないか?イギリスでも投票率が低く、そうなっている。 全ての項目において、権利と責任がある。例えば6の安全な環境を手に入れるためには、環境をつくっていく責任もある。 - 発表2
「在日外国人には当てはまらないこと」に選んだこと
5:在日外国人はIDを携帯していなくてはいけない。警察に見せろといわれたら、見せなくてはいけないから。
6:家を借りられない人もいるから、見つけにくいから「ペットお断り・外国人お断り」のように。
→講師のコメント…英国でも同じような時代がありました
(講師のコメント)
難民の人たちは7のパスポート所持は当てはまるだろうか?みなさん、難民の人たちの生活について知っていることはあるだろうか?(参加者から反応なし。)全てのことを知っている必要はないが、自分と違う人たちのことをどのくらい知っているのか、どのくらい知らないのかを知るのは大切なことだ。今日の参加者の人たちは、途上国の開発についてはよく知っているのに、自分の地域内の、身の回りの開発について案外知らないのではないだろうか?「市民=地球市民」になっていないか?もっと知っておいた方がいいことがあるかもしれない。
4.ワーク2:世界人権宣言
(講師の解説)
世界人権宣言とは、世界の全ての人が持っている権利。全ての人というのは、自分も隣の人も、ということだ。DEARのセミナーに参加している人たちは、ある国家とのかかわりの中で人権をとらえている人が多いと感じた。みなさんは「地球市民」という言葉をどのように捉えているだろうか。わたしはこの言葉は、排他的でなく、全ての人を対象とした言葉と考えている。
市民性とは、以下の3つのカテゴリー捉えることができると思う。 1.フィーリング(情) 2.ステータス(社会的地位) 3.アクション(何を実行するか) ある人は、「パスポートを持つ」ということを、帰属意識の象徴と捉え、1.感情と表現するかもしれない。ある人は、国籍を2.社会的地位と考えるかもしれない。
(アクティビティ)
(1) 5~6人のグループをつくる。
(2) ワーク1で使用した「市民性の意味を探る」のワークシートの中の14項目を、各グループで話し合ってカテゴリーのどこかに置いてみる。複数のカテゴリーに関わると思う項目は、それぞれの円の重なる部分に置く。(5~6人のグループに分かれて、グループワーク)
(3) 発表
5.ワーク3:子どもの権利
(講師の解説)
子どもの権利条約を読んだことがあるだろうか?
非常に重要な権利について書かれている条文であるから、全ての子どもがこの条約ついて知る機会を与えられるべきであり、全ての教師・親は子どもたちに知る機会を与えるべきだ。この条約は子どもの政治的・社会的・経済的・文化的権利を保障する目的で、1989年に成立した。国連加盟国のうち、1国だけ批准していない国があるのをご存知だろうか?その国はアメリカ合衆国だ。
多くの人は、途上国の子どもにとってこそ、この条例が大切だと思っているかもしれない。条約なので、法的な執行力を持っている。各国は国連にレポートを送ることが義務付けられており、このレポートはNGOが書いて送ることもできる。残念ながら英国も国連から厳しく批判されている国だ。この条約では、子どもが「守られる」「与えられる」「参加する」の主に3つの権利が保障されている。
(アクティビティ)
(1) 5~6人でグループをつくる。
(2) この条約を読まないで、日本の子どもに必要とされる権利にはどのようなものがあるか、日本の子どもが直面する重大な課題は何かをグループで話しあう。
(3) 発表。
(4) 様々な課題が出たが、講師により以下の4つに集約された。
「1:学校で意思表明の場がない。選択肢が少ない。」
「2:スクール・ドロップアウト(不登校・落ちこぼれ・中退など)」
「3:子どもの売買春」
「4:フード・セイフティ(食料の安全性)」
(5) 4つの課題を書いた模造紙を部屋の四隅のように4隅におき、以下の質問に回答して各自移動した。
1:自分がもっとも重要だと思うこと
2:自分がいる立場や職業を通じて、解決できると思うこと
3:子どもたちが、もっとも重要だと思うだろうこと
4:英国の子どもにとって、もっとも重要だろうと思うこと
5:インドの子どもにとって、もっとも重要だろうと思うこと
立場が変わるたびに民族大移動が起こり、興味深かった。
重要だと感じることと、解決できそうだと思われることが一致していなかったり、子どもの立場にたってみると、重要だと思われる課題が変化したりした。
6.ふりかえり
最後に1人1キーワード、今日印象に残ったこと、学んだことを表現した。
以下のようなキーワードが出た。
参加、市民、権利、義務、難しい、やってみよう、人権、子ども、などなど。
主催者(DEAR)の感想
自分とそれ以外の人の権利と義務について考えるというセミナーを、「公正な社会作りに参加する」ことを掲げる開発教育でも、広く実践していけたらと思う。
今回、オードリー・オスラー氏の用いた手法はとてもシンプルで、「私たちにもできる」と思わせるようなものだった。参加者も活発に意見交換をしていた。イギリスで市民教育を実践しているオードリー・オスラー氏から直接ワークショップを受けられたという経験は貴重であり、また、彼女の進行する過程での参加者への質問の仕方や話のまとめ方がとても参考になったとの声もあった。
※ DEARニュース106号(2003年12月)「実践事例報告」より一部再編集のうえ掲載
※ 著作権は(特活)開発教育協会が保有しています。無断で転載や複製を行うことを禁じます。
解説編-イングランドの市民教育
セミナー「英国の市民教育」






