メディアリテラシー <実践事例>
解説編-自らの認識を問い直す
時事問題を教室へ!グローバル・エクスプレス
時事問題を教室に
-Global Expressセミナー「アメリカのイラク攻撃」
「Global Express」(以下G/E)は、時事問題を教室で扱うための教材だ。DEARでは、G/Eの手法を紹介し日本でのメディア・リテラシーの実践を広めるため、2003年度に6回連続のG/Eセミナーを行うこととした。第一回目はアメリカのイラク攻撃をテーマに、報道が私たちのニュースへの理解にどう影響しているのかを話し合い、私たちの持つ偏見に気づいていった。
| 日時 | 2003年4月12日(土) 13:30~ |
| 参加者 | 教員や会社員、NGO職員など約30名 |
| 主催 | 開発教育協会/DEAR |
| ねらい | アメリカのイラク攻撃を題材に、ニュース報道が限られた情報源からの情報を元に報道していること、それによって参加者の中に偏見や先入観が存在することに気づく。 |
| 展開 | 1. アイスブレーキング 15分 2. フォトランゲージ 30分 3. 私の気持ち 25分 4. キャプションをつけよう! 20分 5. ふりかえり 60分 |
1.アイスブレーキング「部屋の四隅:イラク豆知識」
1.質問やクイズの答えに応じて、会場の4つの角に分かれてもらう。
2.なぜその選択肢を選んだのか、参加者にたずねる。
3.3~4名ずつのグループ分けをし、グループ毎に自己紹介。
質問例:
「お好み焼きでよく使われている次の材料のうち、イラクと深く関わっている材料は次の内どれでしょうか?
・小麦粉・しょうが・ソース・青のり」(答えは「ソース」)
「イラクでの金持ち生活と日本での貧乏生活、やるとしたらどちらが良い? 」など。
2.フォトランゲージ
ねらい
イラクの人々の普段のくらしや生活の写真を通して、イラクの人々に関心を持つ。
マスメディアでは取り上げられない写真を読み解き、報道の偏りや、自分のステレオタイプ、偏見に気づく。
ワーク
1.各グループに、イラクの人々の日常生活から一場面を撮影した写真を、1枚ずつ渡す。(イラクの写真であることは参加者には告げない。)
2.各グループで、この写真が「どこのものか」「いつのものか」「誰が写っているか」「何をしているか」を考えて書き出してもらう。
3.グループ毎に発表する。
写真を選ぶポイント
誰、どこ、いつ、といった事実があいまいな写真の方が、想像力を使うのでよい。また、見方によっていろいろな意味にとれそうな写真を選ぶとよい。
3.私の気持ち
ねらい
普段は読み飛ばしてしまうような記事に対して、自分の気持ちを確認する。
他者と意見を共有することにより様々な受け取り方、感じ方があることに気づく。
ワーク
1. 「イラク国民に向けた米英首脳の演説(要旨)」(朝日新聞、2003年4月11日より)の新聞記事のコピーを各人に配り、黙読してもらう。
2. 読み終えたらワークシートを1枚ずつ配り、この記事を読んだ自分の今の気持ちに当てはまるもの3つを選び丸をつけてもらう。
3.丸をつけたら、グループ毎になぜそれらを選らんだのかを話し合う。
4.全体で共有する。
参加者の様子
・ グループ内でも異なる意見が多くあることに驚いているようだった。
・ 空欄に自分の気持ちを書き込んだ人が1/3程いた。(「傲慢」「うそつき」「ずるい」など)
・ 「選択肢があることで、気持ちを上手く表現できない子どもたちでも、思いを話し合うことができる」という意見があった。
4.キャプションをつけよう
ねらい
キャプション(写真の見出し)が写真を見る人に影響を与えていることに気づく。
ジャーナリストがどのように取材しているのか、どのような意図で記事を書いているのかに気づく。
ワーク
1. 新聞記事から取ったある写真を、各グループに1枚ずつ配る。
2.その写真にグループでキャプションをつけてもらう。
3.つけたキャプションと、なぜそのようなキャプションをつけたのかを発表してもらう。
参加者の様子
・ その写真によって記者が何を伝えたいのかについて、グループ内で議論が盛り上がった。
・ 同じ写真を使用しても、グループによって違う読み取り方をしていた。
5.紙面比較
ねらい
どのようなトップ記事を持ってくるか、何の写真を使っているかを他の新聞と比較することによりその新聞の主張や方針に気づく。
ワーク
1. 各グループに、新聞一紙とワークシートを配る。新聞は、複数の新聞社の同じ日付のものを選ぶ。
2.グループ内で話し合いながら、ワークシートに記入していく。ワークシートには、記事の見出し、記事そのもの、写真のそれぞれについて、内容や大きさ、そこから受ける印象はどうかなどの質問項目が並ぶ。
ワークシートの質問の例:「トップ記事の見出しは何ですか」「写真からどのような印象を受けますか」「記事の情報源は誰・どこですか」「頻繁に出てくる言葉は何ですか」など。
3.各グループからの発表。
新聞記事を選ぶポイント
新聞の一面は、各新聞社の主張が最も色濃く出る部分である。同じ出来事を一面で取り扱いながら、新聞社ごとに際立った差異の目立つ記事を選ぶとやりやすい。
参加者の様子
・ 同じ日付でも新聞によって大きく違うことに、どよめきがおきた。
・ 「とても面白いが、“これは○○紙だから、こっちは△△紙だから”、という先入観でみてしまう」という声が上がった。
参加者からの声
- 普段何気なく見聞きして情報を得ているメディアを、違った視点でみるきっかけとなった。
- メディア・リテラシーについて、情報の扱い方が難しいと思った。「真実は何か? 」を見極めること、疑ってかかる姿勢が求められていると感じた。
- 自分一人で情報収集したり、材料を集めたりするのは大変だが、このような教材がタイムリーに出ると教育現場でも活用して行けるのではないかと思う。
- 小学生を対象にするのは難しそう。
- はじめて新聞を読み込むという作業をして、自分がいかに無意識に記事を読んでいるかということが分かった。マインドコントロールされている自分が怖くなった。
- 方法としてすぐに教室でやってみようという気にさせてくれた。
実践者の感想
- このワークショップは、G/Eで使われている手法を活用してタスクで考案したオリジナル。オリジナル版を作ってみて難しく感じた点は、まず膨大な情報の中からどの問題を選ぶか、ということだった。また、時事問題は賞味期限が短く、問題が起こってからすぐさま教材化し、教育現場で実践するという、まさに「エクスプレス」な対応が必要となることだ。
- 参加者に「これらの実践を自分の持つ現場でできると思うか」と質問すると、「私の気持ち」についてはほとんどの方ができると答えてくれた一方で、「キャプションをつけよう」や「誌面比較」は、「年齢が低い生徒には難しい」という声があった。対象者の年齢に合わせたアクティビティを検討していく必要があるだろう。
※ DEARニュース103号(2003.6)特集より一部再編集のうえ掲載
※ 著作権は(特活)開発教育協会が保有しています。無断で転載や複製を行うことを禁じます。
8歳から14歳を対象に、時事問題を教室で扱うための教材。ニュースが話題になっている内に教室で扱えるよう、毎号テーマとなるニュースを受けてから10日以内に、年6回程度制作・発行される。目的は、①情報の受け手がメディアで流れる情報を批判的に分析し、自ら考える力を養うこと、②ステレオタイプや偏見に気づくこと、③特に「開発途上国」で起こるニュースの状況を理解し、彼らの日常生活と結び付けて考えること、④様々な視点、「南」の価値観を「北」の若い世代に伝えること、などである。情報を読み解く手法とアクティビティの紹介、資料や解説などで、日ごろ開発問題を教えない教員も利用できるよう、すぐに使えるシートや図表を用いて提供している。最近のテーマとしては、ワールドカップ(2002.6)、ヨハネスブルグ・サミット(2002.8)、アメリカのイラク攻撃(2002.11)などが取り上げられている。年間購読料£35(支払手数料込み約8000円)
バックナンバーはウェブサイトからのダウンロードできる。(すべて英語)
DEP Manchester Development Education Project http://www.dep.org.uk/globalexpress/
DEPの教材を元に作成した日本版「グローバル・エクスプレス」(全5冊)はDEARで発行している。
解説編-自らの認識を問い直す
時事問題を教室へ!グローバル・エクスプレス






